2025
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Da Viunchi’s Robot — A Will Dwelling in Shadow(ダビウンチのロボット ~影に宿る意志~)

音楽学部第二ホール

本作品は、ロボットライド株式会社が開発した外骨格型ロボットスーツ「スケルトニクス」を用い、パフォーミングアート、メディアアート、デジタルミュージックを融合させた新たな舞台表現を創出するものである。スケルトニクスは、装着者の動作をリンク機構によって拡張し、全高2.5~3メートルの巨大な身体を人力で操作できるユニークなロボットであり、その圧倒的な存在感は芸術表現の装置としても有効である。
東京藝術大学後藤研究室では、同ロボットにモーショントラッキングセンサーを装着し、動作をリアルタイムで音や映像に変換する実験を進めてきた。DMXやレーザー演出と組み合わせることで、音・映像・身体の統合的表現を実現し、「機械と人間の融合による身体表現」を追求している。
本作品は、テクノロジーを身体の延長と捉えた芸術表現の実験である。観る者の感覚や認知に作用する未来型パフォーマンスの構築を目指す。

『ダ・ヴィンチのロボット ~影に宿る意志~』

本作品は、ルネサンスの天才レオナルド・ダ・ヴィンチが実際に設計・制作した「ロボット騎士」の歴史的構想を起点とし、現代のテクノロジーと芸術を融合したインスタレーション型音楽劇である。1495年頃、ダ・ヴィンチは中世の騎士の鎧を模した自動機械を滑車とケーブルによって構築し、実際に腕や首、脚部が動く“人間機械”を制作した。
この「ロボット騎士」の思想と非常に類似しているのが、現代日本で開発されたスケルトニクス(Skeletonics)である。スケルトニクスは、ロボットライド社が開発した非電動型の外骨格型拡張スーツであり、使用者の身体の動きをリンク機構によって拡張し、そのまま巨大な身体へと伝達する。驚くべきことに、ダ・ヴィンチのロボットとスケルトニクスはいずれもモーターや電子制御を一切使用せず、「人の力そのもの」を動力とする構造になっている。この構造的類似は、時代を超えて「身体の記憶」がいかに機械と接続されてきたかを象徴している。
本作では、スケルトニクスを装着した演者が、モーショントラッキングを通じて、リアルタイムに音と光を生み出す。演者の動作は、サウンドスケープを生成し、照明(ムービングライト/ディマー)、レーザー、プロジェクターを統合制御しながら、空間全体を「影の劇場」として変容させていく。
影は実体よりも先に動き、記憶を語り、時に観客の影と交差し、共鳴する。本作品は、「光と影、記憶と身体、機械と芸術が交差する“小さな音楽劇”」として構成され、詩的かつ身体的なメディアアート体験を創出する。 

I LOVE YOU採択企画:Da Viunchi's Robot — A Will Dwelling in Shadow(ダビウンチのロボット ~影に宿る意志~)
アートDX領域

アーティスト/プロジェクト

後藤英、秋山大知、田中誠人、ヨウセイキツ、テイリンサン、李瓊宇、張楊

後藤英
作曲家・ニューメディアアーティスト。米欧で学び、IRCAM等で活動。多数の国際賞を受賞し、作品は世界各国の音楽祭や芸術祭で上演。現在、東京藝術大学音楽学部教授。

MORE WORKS

ARCHIVE

過去の展示作品を アーカイブとして まとめています。

   

芸術未来研究場は、人が生きる力であるアートを根幹に据え、人類と地球のあるべき姿を探求するための組織として2023年4月に創設されました。閉じた施設としての「研究所」ではなく、様々なプレイヤーが集い、つながり、社会に開かれたアートを実践し、未来を共につくっていく場だから「研究場」と名付けています。
 
東京藝術大学は、伝統の継承と新しい表現の創造のための教育研究機関であると同時に、アートの未来を常に考え、様々なステークホルダーと共に社会を形づくる主体でもあります。アートの礎である「いまここにないものをイメージする力」は、世界を変え、未来をつくる力です。これまでにも、学部、学科、研究室単位では様々な学外の組織との協働がありましたが、今後は全学横断的にこれを推進していくことで、企業・官公庁・他の教育研究機関との連携を強化し、社会の様々な領域におけるアートの新たな価値や役割を増やしていきます。
 
また、こうした連携を実践する基盤として、芸術未来研究場では次の6つの領域を設定しました。


[ケア・コミュニケーション]

医療、福祉や地域コミュニティをはじめとするWell-beingな社会づくりにおけるアートの社会的価値を探求します。

[アートDX]

デジタル技術やICT技術を活用した教育研究を推進し、アートの可能性を拡げます。

[クリエイティヴアーカイヴ]

多様化する表現手法に対応した、アートの保存・継承と、新たな創造への活用に関する研究を推進します。

[キュレーション]

対話と協働を通してアートと現代社会との関係性を紡ぎ上げる人材の育成と実践研究を行います。

[芸術教育・リベラルアーツ]

東京藝大における教育のあり方を探究しながら、より幅広い対象に芸術教育を拡げ、地域や年齢、社会的属性に関係なく、誰もが自身の人生の中にアートを感じられる社会づくりを推進します。

[アート×ビジネス]

教育研究成果の社会実装・事業化を推進し、芸術産業の創出・発展に寄与します。


これらが互いに領域の枠を超えて混じり合い、芸術と社会の未来を切り拓く新たなプラットフォーム「芸術未来研究場」が、今ここからはじまります。